介護マガジン

はじめての介護

もしも家族が認知症になったら その3

筆者 川上氏のコメント

9、10月と2回にわたり、認知症のケアについてお伝えさせていただきました。
今月は認知症高齢者の介護のために知っておきたい大切なこと、“ケアの心得”についてケースを紹介しながらお伝えします。

■どうつきあいますか?ケアの心得

もしも大切な家族や友人が認知症になったらあなたはどう接しますか?福祉の先進国スウェーデンでも昔は山奥の施設におくり、寝かせきりにさせてしまっていたという哀しい歴史があります。介護の経験から次第に周囲のかかわり次第で状態が違うこと、残存能力を生かしながら普通の生活を送ることが症状の進行を緩和することがわかってきました。つまり、認知症を抱えた方がどのように苦しんでいて、周囲に何を求めているかがわかってきたのです。家族からのご相談を受けていると、残念ながら本人の症状を進行させてしまっているのは家族自身である状況に繰り返し遭遇します。認知症であっても普通の生活を送る援助ができます。私達は目には見えない人間杖となって思いやりの気持ちで接することができたらと思います。そのために知っていてほしいことをお伝えします。

認知症と間違えやすいケース

  • Hさんイメージ

Hさんは88歳。半年前頃から急激に足腰が衰え、外出しないでぼーっとしていることが多くなりました。認知症と思われる妄想の症状もありました。近くの内科医師からは認知症でしょうけれど90歳近い高齢なのでそのまま経過をみましょうと言われ自宅で過ごしていました。しかし症状はひどくなる一方で、だらしなくなっていく親についつい口調もきつめに叱ってしまいます。 そこで、再度専門医に受診をすすめると、神経内科の医師の診察で脱水症状が顕著にあることがわかり即入院し、点滴治療が開始されました。しばらく食事を摂っていなかったこともわかり、脱水症状と栄養状態の改善、義歯の調整を図ることで本人の混乱も消えてゆきました。

先月もお伝えさせていただきましたが、“なんとなく認知症だろう”“歳だからしょうがない”とそのまま見過ごしてしまいがちです。このケースのように身体的な問題から意識への影響が出ていることもあります。また、初期の段階では加齢による物忘れなのか認知症による症状なのかはとてもわかりにくいものです。高齢期には小さなことをきっかけにさまざまな変化がおこります。専門医に受診をすると、他の疾患との鑑別を行ったり必要に応じてCT(コンピューター断層撮影)検査やMRI(磁気共鳴画像)検査などや、質問方式の検査を行ったります。病気を恐れることなく、体の中で起こっていることを正しく理解することが大切です。


表1 認知症と間違えやすい状態
※画像をクリックするとPDFファイルが表示されます。プリントアウトしてご利用ください。

認知症と間違えやすい状態

 

■軽度認知症障害とは

「年齢相応を超えた物忘れなど、認知機能に障害はあるが、日常生活に支障がない」場合を軽度認知症障害MCI(Mild cognitive Impairment)と呼びます。その中には高齢で老化による知的能力の低下もあります。この段階から脳リハビリテーションなど、何らかの対応を始めることがとても大切です。毎日の暮らしを見つめ直し、脳を楽しんで使う習慣や運動を取り入れるようにしましょう。

■初期段階の誤解

認知症の高齢者はある日突然認知症になるのではありません。“本人に自覚がない”は大きな間違いです。物忘れが多くなってきた初期の段階では“何だか自分がおかしくなってしまって皆に迷惑をかけてしまう。どうしてこんなことになってしまったのか悲しい”これは認知症の方の心の中です。不安で孤独、やり場のない悲しみを持っていることを知ってください。困っていたら間違いや失敗を指摘するのではなく、思いやりの気持ちを持ってヒントを伝えましょう。
例えば、調理ひとつとっても様々な機能が働いて計画的に動いています。献立を考える、誰とどこで食べるのか、好みを配慮し、メニューを記憶する、買い物に行く店を選択し食材を選択するなどです。お料理上手だったお母さんが最近調理しなくなってきたのは、調理の手順を忘れてしまっている場合があります。おみそ汁の手順を忘れてしまっているようなら、さりげなく手伝いながら「今日の具はわかめとお豆腐にしましょう。」「お味噌はいつもの赤だしがいいわね。」などとさりげなく助言し、自分でできるように見守りましょう。失敗するからと役割を奪ってしまうことがないように注意しましょう。


表2 接し方の原則・心がまえ
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接し方の原則・心がまえ

 

来月は症状の進行してしまったケースをご紹介しながら、ケアの心得についてお伝えさせていただきます。

 


 

  • 帰宅後に焚く我が家のアロマテラピー

帰宅後に焚く我が家のアロマテラピー
毎日の暮らしでは“自然療法”を大切にしています

※自然療法:人間に本来備わっている自然な力に作用し、心もからだもホリスティックにバランスを整えます。
不調になってからではなく、健康を維持していくために使うことができます。

9月・10月、ここのところ難しいコンサルティングが続きました。帰り道、夜空に浮かぶお月さまを見上げます。大きく深呼吸。相談の時間は私が最も大切にしている時間です。ところが、相談者の抱えている問題を解決し前に進めるようサポートすることは、なかなか容易なことではありません。頭は冷静に、心は熱く、これで十分などという気持ちには何度回数を重ねてもなりえません。
「もっと早く知っていれば良かった」「これから高齢者が増えるのにこんな状態で介護の世界は大丈夫なのかしら」「人生の終盤でより大事なことは、それぞれの自立なのかもしれないね。(70代男性)」相談者の言葉が胸に響きます。
人に関わる仕事を生涯の仕事と私は選択しました。仕事はプロの道です。人を理解したいと思うなら、自分自身を理解しようと努力していること。人の苦しみや不安を理解するためには、自分自身の不安と向き合える勇気を持っていること。今日よりは明日と努力し続けていること。人の相談に対応するという私たちには常にそんなことが求められているのではないでしょうか。近頃そんなことを感じています。ケアは奥深い人と人との関わりです。ケアを通して成長させていただいていることに、いつしか気がつく時がきます。出逢ってきた患者さんや相談者の一人ひとりから多くのことを学ばせていただいています。

  • 紅葉と富士の山 Photo by 大島紀夫
    紅葉と富士の山
    Photo by 大島紀夫

植物からの恵みを小さな器に1滴2滴。仕事を終えて帰宅すると、土器バーナーのろうそくに火を灯します。芳香療法は私の楽しみのひとつです。心身ともに疲れた時は、太陽のエネルギーをいっぱい浴びた植物から元気を分けてもらいましょう。アロマテラピーに出会ってから15年、最近ではその効果も実感するようになりました。この秋お気に入りなのはゼラニウム、ローズ、オレンジ、フランキンセスなどがブレンドされている精油。女性ホルモンのバランスを保つ作用があり、とても落ち着いた香りです。鼻から吸入することによりそれぞれの植物の力が作用します。アロマポットやバーナーがない時にはティッシュペーパーやタオルに1滴垂らす、洗面器に熱湯を入れて1~2滴垂らす、これでも十分お部屋に香りが漂います。精油はオーガニックのものが少々高価でもおすすめ、香りも効果も違います。よい香りに接すると気分が落ち着き、いつのまにか癒されていますね。香り、運動、食物などは健康であるための知恵です。毎日の暮らしを丁寧に、好きな香りを探しながら深まりゆく秋をあたたかくお過ごしください。