
■住みなれた我が家を高齢者にも優しく愉しくリフォーム
~ リフォームの過程 ~
人と同じように住まいも歳を重ねます。加齢によるからだの変化により暮らしのリ・デザインが必要になる頃には、器である住まいのリフォームも必要になります。住みなれた我が家で安全に生活する上で大きな助けになるのがリフォームですが、家族の状況や構成、住まいの環境などによって方法は様々。「時期は?費用は?どうすればいいの?」と不安や混乱に直面する家族も多いようです。
先月、「はじめての介護」で郷里のリフォームについて少しお伝えさせていただきましたが、感想や質問が多く寄せられました。住みなれた我が家を住む人に優しく愉しく、〈ケアの視点と生活をより楽しむ視点〉を目標にリフォームした静岡市川上邸のケースをご紹介いたします。 両親が暮らす住まいでも様々な問題、混乱に直面しながらリフォームを行いました。皆様の暮らしプランに何かお役にたてましたら幸いです。
■静岡市川上邸の暮らし紹介
在住:静岡市
構造:RC(鉄筋コンクリート)築39年 2階建
家族構成:夫婦 85歳(要介護1)と73歳(自立)
リフォーム:浴室 脱衣室 トイレ

東海道五十三次の宿場町に位置する
由比 川上邸
農業漁業が盛んな海沿いの街 地域住民との交流も盛ん。
82歳頃から歩行状態が不安定となる。83歳で現役開業医引退。
室内は杖歩行、訪問リハビリを利用中。
多くの時間をリビングでゆったり過ごしています。
入浴好きで清潔にお洒落をする習慣は現在も継続中。地域に暮らす住民の健康を守り、山奥への往診にも飛び回っていた父も、今では“おじいちゃん”と呼ばれる年齢、40代で建てた住まいも一緒に歳を重ね、ライフスタイルの変化に住まいをあわせるリフォームが必要となりました。
■リフォームのきっかけ
ある日から自宅で過ごす時間が重要視されるステージに変化しました。転倒し生活にサポートが必要な状態になり、外出時間よりも自宅で過ごす時間が大半となった時からです。それまでの暮らしには大きな不便は生じていませんでした。理想的にはもう少し早い時期からの住まい全体のハードとソフトの見直しが必要だったと思いますが、慣れた暮らし方を変えることは住む人にとってはなかなか生まれない視点でした。いざ介護が必要になると、毎日よく使う水周り、浴室、トイレが最も優先されました。浴槽内には入浴台、浴槽のへりに簡易手すりを設置していましたが、用具の設置は場所をとってしまい狭いスペースがさらに窮屈です。入浴中の動作の不安定さを増します。手すりや段差の解消などのリフォームにより、安全に、楽に、すっきりと入浴を楽しむことが期待されます。同時に築40年の自宅の老朽化により浴室からトイレの漏水が発見され、ケア以外のメンテナンスも必要であったことも、大きなきっかけとなりました。
■リフォームによる暮らしの希望
広い住宅の中で、父の過ごす行動範囲は1階のリビング中心の約45平米に。それまで2階にあった寝室は1階に変更。シンプルとなった暮らしでは、食べること、眠ること、入浴することが重要視され始め、これまでよりもぐっと限定された環境だからこそ、住む人に優しく愉しくしたいものです。父は昔からとても身だしなみに気を使っていましたが、自宅での暮らしが中心となってからはことさら毎日の入浴や鏡の前の時間は父の暮らしの中で大切な要素となりました。ところが、住環境は今の父のからだにはあっていません。浴室、脱衣室共に手すりはなく、脱衣室から浴室の入り口には10㎝以上の段差があります。脱衣室の入り口は重い木の引き戸。冬は寒く血圧にも影響します。洗面室、脱衣室はタオルや入浴関連用品などがスムーズな移動を妨げています。室内杖歩行の父にとっては、安全な動線の確保でスムーズに移動できることが希望です。
一緒に住まう母にとってはどうでしょうか。脱衣室には洗濯機もあり毎日頻繁に出入りする場所です。鏡に向かう場所、家事を楽しめる場所、その環境をお洒落に収納しすっきり安全にしたい。また、父の入浴中に事故がないか介護者である母の心配が常につきまとっていました。
・介護する人、される人の双方にとって入浴、整容時間が安全で快適になりリラックスして楽しみたい。
・居ることが愉しい空間にしたい。
・漏水も修復し、心配なく入浴したい。
ケアの視点でのリフォームとケア以外のリフォーム、つまり高齢者にも優しく愉しいリフォーム、その両方を希望していました。
■誰に相談?どうやって事業所を選ぶ?
一体誰に相談したらよいでしょうか。ここはとても大切なポイントです。要介護者を抱える家庭においては、より適切なリフォームを実現するために、やはり建築、介護、医療などの知識を備えた視点が必要です。 よくみられるケースですが、付き合いの長い大工さんや工務店にお願いしてしまいがちです。郷里でもこれまでお世話になっていた大工さんにお願いしようとしていました。ちょっと待って!さて、その大工さん、ケアリフォームの実績はありますか?答えはなしでした。例え1本の手すりでも命を救います。使う人にあわせ取り付け位置、方法、種類など専門的な知識が必要です。
私は担当のケアマネジャーに相談し、ケアリフォームが得意な事業者、ケアマネジャーおすすめのリフォーム会社を3~4社紹介していただくことをお願いしました。さらに実績などから2社に選択。事業者にはそれぞれ提案書、見積もりを依頼。これから中心となる母と信頼関係がとれそうな事業者、人、であることも判断の目安に入れて選択。さらには娘、息子3人が提案書内容に問題がないか、確認することは何かをチェック。私は仕事でお付き合いのあるリフォームプランナーさんにお願いして、見積もりと図面をみせアドバイスをいただきました。こうして第3者の専門家の目もいただき、金額や内容にも大きな問題はないことを確認。最終的には候補事業者の民間F事業者営業担当、プランナー、施工会社社長さんと母、兄、私が直接面談し、リフォームによって実現したい暮らしを伝えました。ケアリフォームの対応、(段差解消、手すり取り付け、引き戸への変更など)も1つひとつ確認し、私達家族は納得して契約書を交わしました。
このように、介護の要素が入ったリケアリフォームでは、まずは担当のケアマネジャーか地域包括支援センターに相談しましょう。ケアマネジャーはケアプランのひとつとしてリフォームをサービス、用具、リフォームから総合的に検討する役割を持っています。

塗り yuriko.kawakami
さて、問題はケアは暮らしの一部だということです。介護の対応が万全に整えられたとしても、手すりだけが目立ち、介護されているイメージが強く居心地が悪いのも考えものです。ケアの視点、デザインなど暮らしの視点、その双方を兼ね備えている事業者を選ぶのはまだまだ難しい現状にあります。リフォーム事業者に施工事例などを写真でご紹介いただけると、選ぶ側はイメージができ助かりますね。
高齢期の暮らしをプランするためにはリフォームの総合展示場などにも日頃から足を運んで、自分達の居心地の良い空間は何かを知り、必要な場面で伝えることもとても大切です。私も改めて実感しました。
私たち3兄弟はリフォームに関する情報を集め、市内のUDリフォームプラザ静岡で父や母にトイレや浴室のバリアフリーなどを体験感できる時間を作りました。この日は孫から両親勢揃いの1日でしたが、実際に暮らしをイメージできる貴重な時間となりました。
“手すりがあればどれだけ便利か”、“段差がなければどれほど移動が楽か”、“引き戸と開き戸の違い”などを両親は初めて体感。こういった時間を作るのも容易ではありませんので、早目早目の準備、行動をおすすめします。
<はじめての介護:2009年6月掲載> 介護保険制度の住宅改修を活用しましょう
どうやって選ぶ?
・リフォーム事例に慣れている
・これまでに実績がある
・介護や医療に関する知識を持っている
これらの項目を判断の目安にするとよいでしょう。
リフォーム実績が豊富でも、介護や医療の知識のない事業者には、介護が必要な家庭の暮らしを把握し問題解決のプランは難しいでしょう。福祉用具の取り扱い事業者は住宅リフォームを行っている場合があります。
すでにお付き合いがある場合には、福祉用具事業者にご相談するのもひとつの方法です。
誰に相談?
・ケアマネジャー
・PT(理学療法士)やOT(作業療法士)
・バリアフリーに詳しい建築士
高齢期のリフォームには様々な視点が必要で、多くの人が関わる必要があること、準備が必要であることなどがお伝えできたでしょうか。この続きはまた来月お伝えいたします。

梅雨の季節の紫陽花探し
雨の季節、私の楽しみは紫陽花を探して出掛けること。
そして、雨の音を窓の外に聴きながら、好きな詩集を開くことです。雨に打たれてなお美しく色づく紫陽花は、言葉を持たずにどんな秘めた想いを持っているのでしょうか。「紫陽花さん、恋しているの?」そっと訊ねてみたくなります。
98歳の柴田とよさんがぽつりぽつりと綴った処女詩集「くじけないで」。陳列されている本の中からこの本を手にとり、思わず購入しました。日頃から介護する人ではなく、される人がもっと気持ちや心を伝えてほしいと願っていた私には、探していたひとに出会え、嬉しくなりました。調べてみると著者であるとよさんは、産経新聞の投稿コーナー「朝の詩」で話題になった女性。このあたたかい本は自費出版された本に飛鳥新社が内容を追加し、2010年3月に再出版されたものだそうです。
シンプルだけど優しく力強い言葉に励まされ、癒されます。何だか切なくもなります。ベットですごす大半の時間でもノートと鉛筆がいつもそばにあるそうです。私もとよさんにのように感性を持ち、優しいけれど生命力のある言葉を持つおばあさんになりたいと思うのです。笑顔の写真も素敵な1ページとなっています。昔存在していた私のおばあちゃんに逢っているような気持ちにもなります。
お逢いしたことはないけれど、とよさんへのささやかなエールの気持ちで1冊また1冊と購入。高齢の両親を抱え、戸惑っている友人や知人に「気持ちが沈んでいるお母さんにどうかな?」と贈り物にしています。98年の歳月生きてこられた女性からの「くじけないで」が伝わるでしょうか。
人生いつの日も朝はやってきます。
飾りのない言葉、強さと優しさを知っている笑顔、手から伝わるぬくもり、雨の音…
歳を重ねるほどにシンプルなものが心に沁みるのは、私だけでしょうか。
○年後、本当に大切なものを身につけてあなたはどんなおじいさん、おばあさんでしょうか?
今日という1日も未来につながっています。今年の夏を元気にお過ごしください。