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国内では最大規模となる福祉機器の展示会、「国際福祉機器展」( H.C.R.)が今年も、東京ビッグサイトで開催され、会期の3日間で約12万人の来場で賑わいました。 第35回となる今年の開催では、昨年に引き続き特別企画として展示場内に「子ども広場」が設けられ、子供向けの福祉機器を集めたほか、子育てや福祉機器に関する相談コーナーが設けられました。さらに、先端技術で研究開発が進められている移動やバリアフリーに関する福祉機器のデモやセミナーも開催され、福祉機器の未来を垣間見ることができました。 H.C.R.では、福祉機器類の展示だけではなく、「はじめての福祉機器 遊び方・使い方」、「高齢者の料理の作り方」、「ふくしのスキルアップ講座」等といったセミナーやワークショップも多数開催されています。また、“国際”的な展示会としては例年「国際シンポジウム」も開催されており、今年は「フランスの少子化政策の実情と課題」として、先進各国の中では高い合計特殊出生率を維持するフランスからFrancois HERAN氏(フランス人口統計学研究所所長)を招いて、少子化政策の現状、出生率・人口動向などの背景、影響等を報告してもらいました。 イベントではいつもは見学者で取材者でもある私たち介護情報ほっとラインですが、今回は出展者の立場で、多くのみなさんをお迎えすることができました。ありがとうございました。以下、2日目(9月25日)の会場から、目を引いたシーンのいくつかをお届けします。 自動車メーカーブース 例年、華やかな演出とていねいな説明、体験展示などで、常に多くの来場者で賑わう自動車メーカーのブースですが、今年は景気低迷の影響なのか、例年通りの規模で訴求する会社と、展示台数や広さも縮小している会社に分かれてしまったように見えました。また、これまでは国際福祉機器展といえば、いわば福祉車両のモーターショーでしたが、企業によっては一般車両で乗降にサポート機能を加えたモデルを展示に加えるなど、自動車では「福祉機器」の定義が徐々に広がっている傾向を感じさせました。 車いす仕様車、フレンドマチック車、リフトアップシート車で9台を展示するトヨタ自動車では、今年モデルチェンジしたばかりのヴェルファイアとアルファードが熱い視線を浴びていました。車椅子の格納容易性やリフトアップの利便性もアピールしているのでしょうが、やはり両車の広大な室内空間や迫力のあるエクステリアデザインなど、実際の市場での人気がそのまま福祉車両にも及んでいるようでした。 三菱自動車は、参考出品の電気自動車の「i MiEV」の助手席回転シート仕様車が展示の目玉でした。この「i MiEV」のベースモデルは同社の軽自動車「i(アイ)」のガソリン車です。これを電気自動車化するとともに、助手席に回転シートを設置しています。コンパクトカーながらスペースユーティリティの高い「i(アイ)」の特徴を示すように、展示では後部座席に車椅子を収納してその広さをアピールしていました。近い将来、排気ガスが出ないコンパクトで弱者の利用に対応したモデルが、自動車の主流になっていく可能性を感じさせるに十分の展示でした。 軽自動車といえば、この夏に発売されたダイハツ工業の「タントウェルカムシート」の周りには人だかりが絶えることがない状態でした。ミラクルオープンドアによる開放感、スライド機能を持った助手席大型シートの使い勝手など、ついに軽自動車を超えた――“楽自動車”とも言うべきでしょうか――新しいジャンルのクルマが生まれたように感じました。 マツダでは、新車種の「ビアンテ」から、後部座席のスライドドアの開閉と連動して自動的に補助ステップが出現~格納されるオートステップモデルを出品していました。説明員によると「オートストップよりもビアンテそのもの、特に後部座席の広さや座り心地を気にされる方が多いですね」と、専門装備よりビアンテの新車効果に戸惑っている様子でした。実際に乗降してみると、たった1枚のステップが加わるだけで、乗降がかなり楽になることに驚きました。 “蜘蛛の巣”で筋トレ? 介護予防に筋トレが導入されるなか、筋トレマシンのバリエーションも拡大しています。例年、様々なマシンを体験できたのですが、今年はそれほど見つけることができませんでした。そのなかで第一印象から強烈にアイキャッチさせていたのが、東京体育機器(株)のブースにあった筋トレマシン「ボディ・スパイダー」です。6~12人が同時にトレーニングできる一方、使わない場合は傘を畳むように折りたたみ、収納場所を必要としません。使用時はまさに蜘蛛の巣にぶら下がる、といった印象で、これがネーミングに使われているようです。同社では販売の他レンタルも行っており、あわせて筋トレ指導にも対応するとのことでした。 場所はゆったり、展示は少しの「子ども広場」 特別企画展示の「子ども広場」。ここは子供向けの福祉機器を集中させた展示、データベース、相談コーナー、休憩スペース等で構成されており、子供連れでも窮屈さを感じさせない、十分ゆとりを持たせたブースレイアウトです。 ただし展示されている機器類は、あくまで出品者のダイジェスト展示という位置づけで、詳細を知るためには実際に出品者のブースに足を運ぶ必要があります。限られた時間で特定ジャンル(この場合は子供向け)の機器類をまとめて認知・体験するには貴重なスペースなのでしょう。それでも、「車いす」「バギー歩行器」のような移動関連の機器類は、説明員が付いて、実際に試乗体験できるような配慮が必要でしょう。実際、この展示スペースは混雑する他に比べて人影が少ないようでした。 「相談コーナー」も同様に行列ができるような状況ではなかったようですが、それでもこうした展示会に、基本的に無料で専門家のアドバイスを受けられる機会を用意するのは、主催者の義務と言っても過言ではありません。 ところで、この項の最初にデータベースと紹介したのは、「日本の子育ての現状」と銘打ったコーナーのことです。日本の将来人口推計や子育て支援関係事業の実施状況等のデータをまとめたパネルを掲示、あわせてレポートを設置(無料で持ち帰りできました)していました。そこには貴重なデータが簡潔にまとめられており、私たちのようなマーケティングビジネスに携わる者にとっては、たいへんうれしい展示サービスでした。 先端技術と福祉機器 もう一つの特別展示「先端技術と福祉機器」のコーナーは、出品・参加各社の実際に機器を動かしてみせるデモが続いていました。参加対象となったのは、1)移動のバリアフリー機器(音声誘導道案内システム、頭の向きに合わせて動く車いす―写真はデモの様子―他)、2)日常生活のバリアフリー機器(ロボットアーム、筋電義手、電子制御義足他)、3)コミュニケーションのバリアフリー機器(指サック型展示読み取り装置他)です。デモスペースは車いすでの見学に十分な余裕が確保されていましたが、PAの調子がイマイチなのか、せっかくの説明が聞き取りにくいのは残念でした。 なお、昨年のH.C.R.でもお伝えした東京理科大学工学部小林研究室の「マッスルスーツ」は、今年も出展。同室からはこの他に、子供向けの歩行障がいがあっても正しい姿勢での歩行をサポートする「ハートステップ」が紹介されていました。障がいの有無を問わず、人間の動きをサポートする機器類は、先端技術を取り込みながら着実に進化し、そのバリエーションを増やしているようです。 広がる手話案内サービス 日立製作所のブースで定着している、ろう者の手話スタッフによる「手話案内サービス」については、今までも何度か紹介してきました。また、「イベントレポート」を通じて、福祉介護をテーマとするイベントゆえにコミュニケーション・インフラの充実、つまり人がどのような状態にあろうが出展者は伝えきる義務があり、主催者はそうした環境を整える責任があると訴えてきました。今回、ついにというかようやくと申しましょうか、TOTO(株)のブースでも手話通訳サービスを発見することができました。これをきっかけに、来年、再来年と、その規模が拡大することを期待しましょう。 「Panasonic」ブランド浸透へ 会場で使用していたカタログにはまだ「ナショナル」と記載されていましたが、この10月にブランド名をパナソニックに統一した旧松下電器産業(株)(現パナソニック(株))及び松下電工(株)(現パナソニック電工(株))は、今回の展示でも「Panasonic」ブランドの訴求を中心に、広大なスペースを確保して、“人にやさしいモノづくり”の現状を余すことなく伝えようとしていました。高齢者をサポートする機器類(システムキッチン、白物家電他)から移動支援機器(車いす、フィットネス機器他)、入浴・排泄介護関連機器などを多数展示。“あの松下が車いすを販売していたのか”などと、その多種多様な商品群に正直、驚いてしまいました。電機メーカーは翌週に開催されたエレクトロニクス総合展「シーテックジャパン2008」に注力したのでしょう。業界ではパナソニックが唯一で最大規模の参加でした。 技術革新めざましい義肢 2008年、北京オリンピックに続くパラリンピックで100m、200m、400mで金メダルに輝き、一躍注目を集めたのが、両足義足のスプリンター、オスカー・ピストリス(南アフリカ)選手でした。オスカー選手は両足義足でありながら、北京オリンピック出場を目指していたことでも有名です。残念ながら、五輪参加標準記録を突破できず、出場を逃したのですが、義肢技術の進歩は、健常者と障がい者の垣根が近い将来に消えてしまう可能性を予感させました。 H.C.R.の会場でも、義肢への技術革新が進んでいることが確認できました。これは川村義肢(株)と(株)栗本鉄工所がNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援で取り組んでいる、「高比強度・難燃性マグネシウム合金製長下肢装具」です。手に持つとたいへんに軽く、しっかりした構造であることが感じられました。 <コメント> 国際福祉機器展は、今年(2008年)で35回を数える、たいへんに伝統のある展示会です。しかし主催の(財)保健福祉広報協会によると、過去3年間で見ると今年の来場者は最小となりました。 2006年 2007年 2008年 来場者数(人) 130,627 128,178 120,773 参加事業者数(国内) 554社 527社 479社 参加事業者数(海外) 16カ国78社 15カ国53社 15カ国51社 出展数 25,000点 25,000点 22,000点 また参加事業者も年々減少しており、今年はついに500台を切って、479社に止まっています。その影響でしょう、出品数も減ってしまいました。 このような集客の不調は、東京以外で開催されている大型の展示会も他人事ではないと、実際に取材した体験から思うのです。 縮小傾向の理由としては、景気の低迷、世帯収入の減少もあるでしょうし、福祉機器の普及も考えられるでしょう。また、このジャンルの展示会が増えて、来場者が分散したのかもしれません。また、介護保険導入時に見られたような事業者の新規参入熱が収まった(実際、新参者が簡単に商売できるほど甘いジャンルではありません)ことも想定されます。 H.C.R.の状況からして、近い将来、こうした大規模大量型の展示会はひょっとすると終焉を迎えることになるのかもしれません。自動車やバイク、車いすなどの移動機器は、モーターショーと融合してもそんなに違和感はないでしょう。健康関連ですと、例えば国体と連動して開催される健康づくりイベントに合体しても問題ないでしょう。 もちろん、福祉関連機器がジャンルを問わず集約する効果を否定するわけではありません。要は、これからの大規模展示会はビッグネームであっても、集客促進・出展勧誘の努力が必要になるということです。 2009年の国際福祉機器展はすでに同年の9月29日(火曜日)~10月1日(木曜日)に開催されることが発表されています。ならば2010年から、何とか休日開催日を入れてもらいたいのです。もちろん会場の都合もあるでしょうが、それが無理なら、1日は夜間時間帯を設定してもらいたい。世の中には、行きたいが平日は都合が付かないという方がいっぱいいらっしゃいます。それは介護環境あるいはその予備軍の人々に実際聞いてみると、決して少数意見ではないことがわかるでしょう。平日休んではいられないのが生活者の現実なのです。そんな人が来場しやすくすることが、出展者の確保にもつながると思うのですが。 取材協力/空間通信 安部 基史 概要 主催 全国社会福祉協議会 保健福祉広報協会 後援 厚生労働省 経済産業省 総務省 国土交通省 東京都 海外参加国大使館 協賛 NHK厚生文化事業団、読売光と愛の事業団、毎日新聞東京社会事業団、産経新聞厚生文化事業団、日本経済新聞社、東京新聞、東京新聞社会事業団、朝日新聞厚生文化事業団、福祉新聞社、日本赤十字社、福祉医療機構、鉄道弘済会、東京都社会福祉協議会、全国心身障害児福祉財団、長寿社会開発センター、シルバーサービス振興会、テクノエイド協会、日本理学療法士協会、日本作業療法士協会、日本アビリティーズ協会、日本障害者リハビリテーション協会、日本リハビリテーション医学会、新エネルギー・産業技術総合開発機構、みずほ教育福祉財団、キリン福祉財団、清水基金、みずほ福祉助成財団、松翁会、丸紅基金、三菱財団、損保ジャパン記念財団、中小企業基盤整備機構 期日 2008年9月24日(水)~26日(金) 会場 東京国際展示場「東京ビッグサイト」東展示ホール URL http://www.hcr.or.jp/exhibition/index.html
国内では最大規模となる福祉機器の展示会、「国際福祉機器展」( H.C.R.)が今年も、東京ビッグサイトで開催され、会期の3日間で約12万人の来場で賑わいました。 第35回となる今年の開催では、昨年に引き続き特別企画として展示場内に「子ども広場」が設けられ、子供向けの福祉機器を集めたほか、子育てや福祉機器に関する相談コーナーが設けられました。さらに、先端技術で研究開発が進められている移動やバリアフリーに関する福祉機器のデモやセミナーも開催され、福祉機器の未来を垣間見ることができました。 H.C.R.では、福祉機器類の展示だけではなく、「はじめての福祉機器 遊び方・使い方」、「高齢者の料理の作り方」、「ふくしのスキルアップ講座」等といったセミナーやワークショップも多数開催されています。また、“国際”的な展示会としては例年「国際シンポジウム」も開催されており、今年は「フランスの少子化政策の実情と課題」として、先進各国の中では高い合計特殊出生率を維持するフランスからFrancois HERAN氏(フランス人口統計学研究所所長)を招いて、少子化政策の現状、出生率・人口動向などの背景、影響等を報告してもらいました。 イベントではいつもは見学者で取材者でもある私たち介護情報ほっとラインですが、今回は出展者の立場で、多くのみなさんをお迎えすることができました。ありがとうございました。以下、2日目(9月25日)の会場から、目を引いたシーンのいくつかをお届けします。
例年、華やかな演出とていねいな説明、体験展示などで、常に多くの来場者で賑わう自動車メーカーのブースですが、今年は景気低迷の影響なのか、例年通りの規模で訴求する会社と、展示台数や広さも縮小している会社に分かれてしまったように見えました。また、これまでは国際福祉機器展といえば、いわば福祉車両のモーターショーでしたが、企業によっては一般車両で乗降にサポート機能を加えたモデルを展示に加えるなど、自動車では「福祉機器」の定義が徐々に広がっている傾向を感じさせました。
車いす仕様車、フレンドマチック車、リフトアップシート車で9台を展示するトヨタ自動車では、今年モデルチェンジしたばかりのヴェルファイアとアルファードが熱い視線を浴びていました。車椅子の格納容易性やリフトアップの利便性もアピールしているのでしょうが、やはり両車の広大な室内空間や迫力のあるエクステリアデザインなど、実際の市場での人気がそのまま福祉車両にも及んでいるようでした。
三菱自動車は、参考出品の電気自動車の「i MiEV」の助手席回転シート仕様車が展示の目玉でした。この「i MiEV」のベースモデルは同社の軽自動車「i(アイ)」のガソリン車です。これを電気自動車化するとともに、助手席に回転シートを設置しています。コンパクトカーながらスペースユーティリティの高い「i(アイ)」の特徴を示すように、展示では後部座席に車椅子を収納してその広さをアピールしていました。近い将来、排気ガスが出ないコンパクトで弱者の利用に対応したモデルが、自動車の主流になっていく可能性を感じさせるに十分の展示でした。 軽自動車といえば、この夏に発売されたダイハツ工業の「タントウェルカムシート」の周りには人だかりが絶えることがない状態でした。ミラクルオープンドアによる開放感、スライド機能を持った助手席大型シートの使い勝手など、ついに軽自動車を超えた――“楽自動車”とも言うべきでしょうか――新しいジャンルのクルマが生まれたように感じました。
マツダでは、新車種の「ビアンテ」から、後部座席のスライドドアの開閉と連動して自動的に補助ステップが出現~格納されるオートステップモデルを出品していました。説明員によると「オートストップよりもビアンテそのもの、特に後部座席の広さや座り心地を気にされる方が多いですね」と、専門装備よりビアンテの新車効果に戸惑っている様子でした。実際に乗降してみると、たった1枚のステップが加わるだけで、乗降がかなり楽になることに驚きました。
介護予防に筋トレが導入されるなか、筋トレマシンのバリエーションも拡大しています。例年、様々なマシンを体験できたのですが、今年はそれほど見つけることができませんでした。そのなかで第一印象から強烈にアイキャッチさせていたのが、東京体育機器(株)のブースにあった筋トレマシン「ボディ・スパイダー」です。6~12人が同時にトレーニングできる一方、使わない場合は傘を畳むように折りたたみ、収納場所を必要としません。使用時はまさに蜘蛛の巣にぶら下がる、といった印象で、これがネーミングに使われているようです。同社では販売の他レンタルも行っており、あわせて筋トレ指導にも対応するとのことでした。
特別企画展示の「子ども広場」。ここは子供向けの福祉機器を集中させた展示、データベース、相談コーナー、休憩スペース等で構成されており、子供連れでも窮屈さを感じさせない、十分ゆとりを持たせたブースレイアウトです。 ただし展示されている機器類は、あくまで出品者のダイジェスト展示という位置づけで、詳細を知るためには実際に出品者のブースに足を運ぶ必要があります。限られた時間で特定ジャンル(この場合は子供向け)の機器類をまとめて認知・体験するには貴重なスペースなのでしょう。それでも、「車いす」「バギー歩行器」のような移動関連の機器類は、説明員が付いて、実際に試乗体験できるような配慮が必要でしょう。実際、この展示スペースは混雑する他に比べて人影が少ないようでした。 「相談コーナー」も同様に行列ができるような状況ではなかったようですが、それでもこうした展示会に、基本的に無料で専門家のアドバイスを受けられる機会を用意するのは、主催者の義務と言っても過言ではありません。
ところで、この項の最初にデータベースと紹介したのは、「日本の子育ての現状」と銘打ったコーナーのことです。日本の将来人口推計や子育て支援関係事業の実施状況等のデータをまとめたパネルを掲示、あわせてレポートを設置(無料で持ち帰りできました)していました。そこには貴重なデータが簡潔にまとめられており、私たちのようなマーケティングビジネスに携わる者にとっては、たいへんうれしい展示サービスでした。
もう一つの特別展示「先端技術と福祉機器」のコーナーは、出品・参加各社の実際に機器を動かしてみせるデモが続いていました。参加対象となったのは、1)移動のバリアフリー機器(音声誘導道案内システム、頭の向きに合わせて動く車いす―写真はデモの様子―他)、2)日常生活のバリアフリー機器(ロボットアーム、筋電義手、電子制御義足他)、3)コミュニケーションのバリアフリー機器(指サック型展示読み取り装置他)です。デモスペースは車いすでの見学に十分な余裕が確保されていましたが、PAの調子がイマイチなのか、せっかくの説明が聞き取りにくいのは残念でした。 なお、昨年のH.C.R.でもお伝えした東京理科大学工学部小林研究室の「マッスルスーツ」は、今年も出展。同室からはこの他に、子供向けの歩行障がいがあっても正しい姿勢での歩行をサポートする「ハートステップ」が紹介されていました。障がいの有無を問わず、人間の動きをサポートする機器類は、先端技術を取り込みながら着実に進化し、そのバリエーションを増やしているようです。
日立製作所のブースで定着している、ろう者の手話スタッフによる「手話案内サービス」については、今までも何度か紹介してきました。また、「イベントレポート」を通じて、福祉介護をテーマとするイベントゆえにコミュニケーション・インフラの充実、つまり人がどのような状態にあろうが出展者は伝えきる義務があり、主催者はそうした環境を整える責任があると訴えてきました。今回、ついにというかようやくと申しましょうか、TOTO(株)のブースでも手話通訳サービスを発見することができました。これをきっかけに、来年、再来年と、その規模が拡大することを期待しましょう。
会場で使用していたカタログにはまだ「ナショナル」と記載されていましたが、この10月にブランド名をパナソニックに統一した旧松下電器産業(株)(現パナソニック(株))及び松下電工(株)(現パナソニック電工(株))は、今回の展示でも「Panasonic」ブランドの訴求を中心に、広大なスペースを確保して、“人にやさしいモノづくり”の現状を余すことなく伝えようとしていました。高齢者をサポートする機器類(システムキッチン、白物家電他)から移動支援機器(車いす、フィットネス機器他)、入浴・排泄介護関連機器などを多数展示。“あの松下が車いすを販売していたのか”などと、その多種多様な商品群に正直、驚いてしまいました。電機メーカーは翌週に開催されたエレクトロニクス総合展「シーテックジャパン2008」に注力したのでしょう。業界ではパナソニックが唯一で最大規模の参加でした。
2008年、北京オリンピックに続くパラリンピックで100m、200m、400mで金メダルに輝き、一躍注目を集めたのが、両足義足のスプリンター、オスカー・ピストリス(南アフリカ)選手でした。オスカー選手は両足義足でありながら、北京オリンピック出場を目指していたことでも有名です。残念ながら、五輪参加標準記録を突破できず、出場を逃したのですが、義肢技術の進歩は、健常者と障がい者の垣根が近い将来に消えてしまう可能性を予感させました。 H.C.R.の会場でも、義肢への技術革新が進んでいることが確認できました。これは川村義肢(株)と(株)栗本鉄工所がNEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の支援で取り組んでいる、「高比強度・難燃性マグネシウム合金製長下肢装具」です。手に持つとたいへんに軽く、しっかりした構造であることが感じられました。
<コメント> 国際福祉機器展は、今年(2008年)で35回を数える、たいへんに伝統のある展示会です。しかし主催の(財)保健福祉広報協会によると、過去3年間で見ると今年の来場者は最小となりました。
また参加事業者も年々減少しており、今年はついに500台を切って、479社に止まっています。その影響でしょう、出品数も減ってしまいました。 このような集客の不調は、東京以外で開催されている大型の展示会も他人事ではないと、実際に取材した体験から思うのです。 縮小傾向の理由としては、景気の低迷、世帯収入の減少もあるでしょうし、福祉機器の普及も考えられるでしょう。また、このジャンルの展示会が増えて、来場者が分散したのかもしれません。また、介護保険導入時に見られたような事業者の新規参入熱が収まった(実際、新参者が簡単に商売できるほど甘いジャンルではありません)ことも想定されます。 H.C.R.の状況からして、近い将来、こうした大規模大量型の展示会はひょっとすると終焉を迎えることになるのかもしれません。自動車やバイク、車いすなどの移動機器は、モーターショーと融合してもそんなに違和感はないでしょう。健康関連ですと、例えば国体と連動して開催される健康づくりイベントに合体しても問題ないでしょう。 もちろん、福祉関連機器がジャンルを問わず集約する効果を否定するわけではありません。要は、これからの大規模展示会はビッグネームであっても、集客促進・出展勧誘の努力が必要になるということです。 2009年の国際福祉機器展はすでに同年の9月29日(火曜日)~10月1日(木曜日)に開催されることが発表されています。ならば2010年から、何とか休日開催日を入れてもらいたいのです。もちろん会場の都合もあるでしょうが、それが無理なら、1日は夜間時間帯を設定してもらいたい。世の中には、行きたいが平日は都合が付かないという方がいっぱいいらっしゃいます。それは介護環境あるいはその予備軍の人々に実際聞いてみると、決して少数意見ではないことがわかるでしょう。平日休んではいられないのが生活者の現実なのです。そんな人が来場しやすくすることが、出展者の確保にもつながると思うのですが。
取材協力/空間通信 安部 基史
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