介護マガジン

ほっとライン寄席

え~。どうもお暑うございます。しばらくの間、お付き合いをお願いします。

夏場になりますと、よく寄席で怪談噺をやりますが、これは怖い噺をして少しでもお客さんに涼しんでいただこうという事でございます。ということで今回は、そんな噺でお付き合いを願いますが…。

この噺は、とにかく長い噺で落語でも1番長い噺と言ってもいいかもしれません。長いというよりは、おしまいがないと言った方がいいかもしれません。たいがい物事には、始めがあれば必ずおしまいがあるのですが、おしまいがないという、この辺りが怪談噺たる所以ではないかと思います。

  • のっぺらぼうイメージ

小間物屋を営んでいる男が、いつものように得意先をまわって夜遅くに橋を渡ろうとすると、若い娘が身を投げようとしています。これを助けようと娘の後ろへまわり
「ちょいとおよしなさい。死のうなんて料簡をおこしちゃいけません。いったい、なぜ死のうとしたんです?」と尋ねたのですが、娘はたださめざめと泣くばかり。しばらくすると娘が
「じゃ、おじさん。あたしの死のうとした訳を聞いてくれますか?こんな顔でも」と、ひょいと娘の顔を見ると、これが“のっぺらぼう”。
のっぺらぼうというのは、目も鼻も口もないゆで卵のようなツルンとした顔。で、口がなくて、どこで喋ったんだ!と聞かれると非常に困るのですが…。驚いたのなんの。慌てて娘を突き飛ばして無我夢中で駆け出すと、遠くにポッと明かりが見えます。夜明かしのそば屋で、あ~助かったとそば屋に飛び込み
「おやじ、俺あそこで、のっぺらぼうを見たよ」
「そうですか。あの川には年老いた、かわうそが住んでまして、あれが化けるんですよ。狐狸は、人間そっくりに化ける事ができるんですが、かわうそは人間の身体に化ける事はできるんですが、肝心の顔が化ける事ができない。だから、かおうそと言うんで」
「この野郎、こんな時につまらねぇしゃれを言うな」
「旦那、のっぺらぼうをご覧になったんですか。へぇ~…旦那が見たのっぺらぼうは、こんな顔ですか?」そば屋の顔を見ると、これものっぺらぼう!
どこをどう駆け出しましたか、気がつくと家の前。女房に
「俺ぁそこで2人、のっぺらぼうを見たよ」と言うと、女房が
「お前さん。本当にのっぺらぼうを見たの?へぇ~…じゃお前さんが見たのは、こんな顔かい?」
見ると女房の顔までのっぺらぼう!その場に気を失って倒れると、女房に起こされる。今のは夢か。
「俺ぁ夢の中で、のっぺらぼうを見た」
「お前さんが夢でのっぺらぼうを見たの?へぇ~…じゃお前さんが見たのは、こんな顔?」
見ると、また女房の顔がのっぺらぼう!気を失っていると、また女房に起こされる。
と、これが延々と続くから、おしまいがないという噺で…。