介護マガジン

ほっとライン寄席

Vol.117 ●現代版、桃太郎

  • 桃太郎

え~。お寒い中のお運びで、厚く御礼を申し上げます。

「桃太郎」という昔話を知らない、聞いたことがないという方は、多分いらっしゃらないんではないかと思います。子供の頃に本で読んだり、寝る前に母親に語ってもらったりしたものです。この「桃太郎」という話を聞きながら、寝てしまいました。今夜こそ最後まで聞くぞ!とがんばったことがありました。親達は、寝てしまうと
「あっこの子寝ちゃったよ。子供なんてぇものは罪がないものだね」
と言っていました。

ところが、これが落語になりますとこうはいきません。子供が「桃太郎」を聞きながら色々と親に質問します。
「昔々、ある所に、おじいさんとおばあさんがいました」というと「昔々って、いつ頃、年号は、西暦何年?ある所ってどこ?何県?何丁目何番地?郵便番号は何番?七桁で言ってください。おじいさんは何歳ですか?名前は何てぇの?年金はもらってますか?」
など、いちいち質問するという噺です。

今回は、この「桃太郎」を落語流にお話します。落語では、子供が親に噺を聞かせます。
「昔々、ある所におじいさんとおばあさんがいました」
何で“昔々”って言うのか?別に何年何月と決めても良いんだけど、子供に聞かせるのに難しくなっちゃうから昔々。
“ある所”これも東京なら東京と決め手も良いんだけど、その土地の子じゃない子供が僕の所の話じゃないんだって話が遠くなっちゃうから、日本全国いつどこで喋ってもわかるように、昔々ある所にで良いの。つまり出だしのふた言で話を大きく構えて普遍性を持たせているんです。
“おじいさんおばあさん”これも本当は、お父さんお母さんなんだけど話が堅くなっちゃうから、お年寄りは子供が好きだというところから父と母に、にごりをうって“じじ”と“ばば”なの。
“おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんが川へ洗濯に行く”のも意味があるの。父の恩は山よりも高く、母の恩は海よりも深しから、山へ芝刈りに、海へ洗濯へ行ったんじゃ石けんがきかないから川に洗濯へ行ったの。
“桃を割ると中から玉のような男の子が生まれた”って、子供が桃から産まれてきてごらんよ。果物屋の店先は子供だらけになっちゃうんだから。それから“美味しいきび団子”を持たせてやるって、きびと言うのは何も食べ物がない時に食べる代用品なの。美味しくないんだよ。これは、人間はいかなる時でも贅沢をしてはいけませんよ。倹約しなさいよという教えなの。
“犬と猿ときじ”を連れて行くのは、犬は三日飼われると恩を忘れない仁義を心得ている。猿はとても頭が良い智恵がある。きじは、とても勇気がある。だから仁智勇、この3つをいつも身につけておきなさいという意味なの。
それから“鬼ヶ島”ってあるわきゃないでしょ。これは鬼のような世間の事なの。
宝物を持って帰ったってね。この宝というのは人間にとって一番大切なもの。これは信用という宝。だから鬼のような世間へ出て行って、信用という宝を持って帰ってきて、おじいさん、おばあさん、父と母に親孝行をしなさいよという事なの。わかったお父さん!
「あっお父さん寝ちゃった。親なんて罪がないものだ」
本当か、どうか分かりませんが落語も馬鹿にできません。