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日立製作所の手話スタッフ「Woooツアーライナー」で水戸聾学校を訪れる

  • Woooツアーライナー内を見学する茨城県立水戸聾学校小学部の児童
    Woooツアーライナー内を見学する
    茨城県立水戸聾学校小学部の児童

日立の手話スタッフが学校を訪れて交流を図るのは、「07年3月に筑波大学付属聴覚特別支援学校の生徒さんが、当社のショールーム『ユビキタススクエア横浜』を訪れてくださったのがきっかけです」(大津弘之・同社CS推進センタ長)。学校の社会科見学といえば、県庁や消防署など行政庁を訪問するケースが多いのですが、行政庁といえども、まだろう者への対応が十分ではないようです。

その点同社のショールームでは、手話案内サービスによる万全の対応が可能です。さらに、ショールームへの来場をお待ちするだけでなく、当事者が学校に出向いて交流を図っていくのも、企業としての使命であり、社会貢献になると考えました。この実現の助勢となったのが「プロモーション“Wooo fly about with ANA”」で活躍する移動ショールーム『Woooツアーライナー』です。

バリアフリーな環境で最新の技術やサービスを体験してから交流
  • Woooツアーライナー1

出向くといっても、“交流をしたい”“来て欲しい”と希望する学校がなければ、この活動は絵に描いた餅になってしまいます。これを解決したのが、企業のプロモーション活動とのタイアップです。

ちょうど、超薄型液晶テレビ「Wooo UTシリーズ」を発売したばかりの日立と、2008年4月から国内線へ導入する「プレミアムクラス」をプロモーションしたい全日空の思惑が一致。両社のコラボレートによるプロモーション“Wooo fly about with ANA”として、製品の実物を体験できる移動ショールームを走らせることになりました。こうして登場したのが『Woooツアーライナー』で、2007年12月から日立製作所の事業所や日立グループ会社をはじめ、多数の集客が可能な、宮崎県庁(宮崎市)、ホークスタウン(福岡市)、名古屋テレビ塔(名古屋市)など、全国約80拠点に出向いてイベントを行っています。

聾学校との交流会も、この『Woooツアーライナー』を活用しています。今回の茨城県立水戸聾学校訪問の前には、宮崎県立都城ろう学校へ訪れ、児童・生徒の歓迎を受けました。 もちろん、「プロモーション“Wooo fly about with ANA”」は、ろう者に限定したものではありません。しかし、日立の手話スタッフも可能な限り同行しており、なかには既に8拠点を同行したスタッフもいます。そのかいあってか、集客の多い会場では、必ずろう者や車いすのお客さまの姿を見ることができるそうです。

内外装とも飛行機をモチーフにデザインした移動ショールーム
  • Woooツアーライナー2

2008年3月11日、株式会社日立製作所の手話スタッフが、“Wooo fly about with ANA”のプロモーショントラック『Woooツアーライナー』で茨城県立水戸聾学校を訪れ、児童・生徒と交流を深めました。

この『Woooツアーライナー』は、内外装とも飛行機をモチーフにデザイン、内部には全日本空輸株式会社の「プレミアムクラススーパーシート」や、日立の超薄型液晶テレビ「Wooo UTシリーズ」が展示された、まさに動くショールームで、最新のサービスやデジタル機器を体感できます。 子供たちは皆ろう者ですが、日立のろう社員による 手話スタッフ 6名が案内と説明に対応しており、コミュニケーションは万全です。

Woooツアーライナーが来るだけで学校中が楽しい雰囲気に
  • Woooツアーライナー開催告知看板

それでは、水戸聾学校での交流会の様子をご紹介しましょう。『Woooツアーライナー』は体育館に横付けされ、体育館の中には、パソコンやプロジェターなどが設置されます。このパソコンは、手話アニメーションソフト「MimehandⅡ」を操作しながら、生徒さんが情報のバリアフリー化を学ぶためのものです。 『Woooツアーライナー』へ乗り込むためのタラップや看板など、周辺の設えを完了し、お馴染みの♪この~木なんの木気になる木・・・♪が流れ出すと準備万端です。学校中が華やかな雰囲気になります。体育館へ入場してくる生徒たちは、どうやらテンションが上がっているようで、みんなワクワク顔です。10分間のオリエンテーション(挨拶、スタッフ紹介)の後、学年に応じて、次のスケジュールで交流会が進みます。

スケジュール
13:30~13:40 オリエンテーション(挨拶・スタッフ紹介等)
13:40~14:30 Woooツアーライナー見学、手話ソフト体感
14:30~15:20 交流会
※小学部はオリエンテーション、Woooツアーライナー見学のみ
茨城県立水戸聾学校
小学部 24名
中学部 17名
高等部 26名
合 計 67名

手話と筆談で交流3 手話と筆談で交流2 手話と筆談で交流1

体育館へ入場したらオリエンテーションからスタート。「今日はみんなで楽しく過ごしましょうね」と手話スタッフ。追って“MimehandⅡ”の手話アニメーションが「楽しく交流したいと思っています」と続きます。子供たちも「よろしくお願いします」と挨拶。オリエンテーションの後、学年などで4つのグループに分かれ、体感スタートです。

小学部は『Woooツアーライナー』の見学が中心です。

終了時は、生徒一人ひとりとガッチリ握手 代表の女子生徒から、手話スタッフへお礼の挨拶

WoooツアーライナーのANAプレミアムクラスのゆったりと豪華なシート。トラックの中にこういう設備があること自体にも驚いています。実際に飛行機に搭乗したかのように窓から外を覗き込む子供たちが頻出。いつもの学校の風景でも、きっと違った印象を持ったことでしょう。 (当日は幼稚部の子どもたちも見学しました。[中央と右の写真は幼稚部の子どもたち])

インタビュー取材3 インタビュー取材2 インタビュー取材1

【左】通天閣のシンボル「ビリケンさん」の説明をする手話スタッフ。笑顔で楽しそうに説明する手話スタッフに、子供たちも引き込まれます。 【中央・右】一通り説明が終わり、Woooツアーライナーを降りるころには、全員がファミリーのように。子供たちはスタッフをかなり気に入ったのでしょう、抱き付きたくて仕方がないといった様子です。

中身を確認して大喜び 中身をたしかめる おみやげプレゼント

見学の最後におみやげをプレゼント。至れり尽くせりですね。子供たちの興奮はピークです。すぐ中身を確かめ、「あっ、ピカチュウだ!」など、大喜びです。

中学部以上の生徒は、手話アニメーションソフト「MimehandⅡ」を操作しながら、情報のバリアフリー化も学びます。

手話アニメーション説明2 手話アニメーション説明1

「入力した日本語を手話アニメーションにできるソフトです。文字と同時に手話による説明もあると安心感が違いますよね。こうやって、より情報のバリアフリーを実現する1つがこのソフト。日本語を手話アニメーションにするだけでなく、表情や身振りも編集できるんですよ。さぁみんなでやってみましょう」との説明を受けて、パソコンの前へ移動。実体験します。

トラックから降りても積極的に質問 中学部以上になると質問も活発

中学部以上になると、質問も活発です。生徒の中には、車内でのディスカッションだけでは足らず、トラックから降りてきても、積極的に質問。「手前 質問をする男子生徒、奥 手話スタッフ」(右写真)

活発なコミュニケーションであっと言う間に終了時間を迎えた交流会

『Woooツアーライナー』や手話ソフトを体験した後に、交流会が開かれます。生徒は2グループに分かれて、日立の手話スタッフ(ろう社員)を車座に囲み、意見を交換します。手話スタッフは、自身の学生時代の話や今の仕事の話などを交え自己紹介をし、生徒から様々な質問を受けます。

海外旅行が趣味と紹介したスタッフに、どんな国に行ったことがあるのか、オランダにも行ったことがあるのかなどと“答えやすい”質問もありますが、時間が経つに連れて徐々に“働いて良かったことは何ですか?”“会社に入って、自分で変わったと思うことはありますか?”“不安に思ったことは?”と、進学や社会人になることについての相談やアドバイスを求めるような、いわば切実な話題が増えていました。

手話スタッフは、人生の先輩として、後輩が社会に出る不安を軽減できればと、以下のように質問に対して真摯な姿勢で、曖昧にせずきっちりと、時にはユーモアを含めて返答していきます。

  • 「入社当時は、丁寧に教えてもらってもわからないということも多かったが、マナーだけは気を付けていた。教えていただけることへの感謝の気持ちをきちんと伝える。事務連絡などの簡単な業務も電話ができない分、メールで頑張る。そのためには文章がうまくならなければならない。文章をうまくなるには言葉を知らなければいけないと、言葉1つ1つから一生懸命勉強した」
  • 「入社時に不安がなかったかと言えば、やっぱりありました。でも期待も大きかったんですよ。私は学生時代、まわりが女性ばかりだったので、もしかしたら出会いがあるかも?なんて期待もしてたんです。でも、実際入ってみると、まわりはオジサンばかりで、ちょっと期待はずれでしたね」(一同笑)
  • 「私はPCすら使えなかった。しかし、その事実は包み隠さず伝えた。ろうであることも包み隠さず話した。そのほうがコミュニケーションは取りやすかった。自分のことをきちんと説明してわかってもらうことは非常に重要。きちんと説明することを心がければ健常者と一体になれる。自信を持ってほしい。」
  • 「働いて良かったこと?それはお金をもらえることですね(笑)それで海外旅行にも行けるし、お酒も飲めるようになった。職場の人と飲みに行くと、いろいろなことを教えてもらえて、ためになるし、何より楽しい」
  • 「給料がもらえることが一番大きいかも。今まで親に頼っていたものが、1人で生活できるようになる。すると自然と責任感が生まれ、それが自信にもつながる」
  • 「いずれみんなも家庭(子供)を持つことになると思うけど、奥さんのことをきちんと考えてあげてサポートしてあげてくださいね(笑)」

質疑応答を重ねるうちに、予定の50分間はあっと言う間に終了。生徒からは次々と質問が続くので、手話スタッフも終了タイミングを図れず、しばしの延長となりました。

その後、生徒の代表からお礼の挨拶があり、これで交流会のスケジュールは無事終了です。『Woooツアーライナー』の見学を含めても2時間程度のイベントですが、生徒たちにとっては、新しい技術やサービスを知ることはもちろん、普段の生活ではなかなか得られない多くのことを学び、感じる機会になったのでは、と感じました。

車座になり手話と筆談で交流3 車座になり手話と筆談で交流2 車座になり手話と筆談で交流1

車座になり、手話と筆談で交流。事前に、生徒へは手話スタッフの社歴や趣味などプロフィールが行き渡り、生徒たちからも事前に質問が手話スタッフに寄せられているため、当日がはじめての顔合わせとは思えない程活発なコミュニケーション。

終了時は、生徒一人ひとりとガッチリ握手 代表の女子生徒から、手話スタッフへお礼の挨拶

【左】代表の女子生徒から、手話スタッフへお礼の挨拶 【右】終了時は、生徒一人ひとりとガッチリ握手

インタビュー取材3 インタビュー取材2 インタビュー取材1

当日は地元の新聞社やNHKも取材に来ていました。代表の女子生徒と手話スタッフへインタビュー取材です。夕方6:10のNHKニュースで放送されました。

<コメント>

2006年の冬、日立製作所の手話スタッフの存在を知って、 ショールーム の取材に出向きました。その時点で「活動範囲は今のところ、ショールームをはじめ、同社のプライベートショーや販売店の合同展示会など」という説明でしたが、今回の『Woooツアーライナー』が示すように、活躍の場所は着実に広がっているようです。

今回の全国約80拠点を巡回する他企業とコラボレートした大型プロモーションと、それをフックにした学校での交流会。今回は、聾学校の生徒との交流でしたが、活躍の範囲が、いずれ一般の小・中・高学校へも広がっていけばいいなと感じました。健常者が、ろう者の働いているシーン、活躍しているシーンを見る、そして、実際に交流する機会は意外と少なく、バリアフリーの実現には、こういう交流会(イベント)が、健常者・ろう者双方が理解するきっかけともなりえると感じたからです。

取材協力/空間通信 兼平 真