介護ニュース - 海外レポート

海外の介護に関する取材レポートのコーナーです。カナダ在住の三宅秀子氏より月1回お届けします。

現実から目をそらさないで

  • 悲しげなお年寄りイメージ

毎日の日課としてチェックしているニュースのサイトの広告に、何気なく目が留まりました。それは、おじいさんがとても悲しげな顔をしていて、その背景は黒「Elder Abuse」(老人虐待)の文字。そして「現実に目を向けるとき」と副題が。いったい何事か?と思わされました。実はこれ、6月15日から始まったカナダ政府によるシニアに対する虐待防止キャンペーンの広告でした。

政府が実施したアンケートによると、96%のカナダ人が“シニアに対する虐待は隠されていて表に出にくい”と思っています。そして4~10%のお年寄り、約345,000人の方が何らかの虐待を受けていると考えられています。

政府のお年寄りに対する虐待の定義は「信頼関係のある者がお年寄りを肉体的に傷つけたり、苦痛を与えること」としています。一口に虐待と言ってもいろいろな形態があり、それは肉体的、経済的、心理的、性的そしてネグレクト(無視、放置)などがあります。
そして、政府の作成したパンフレットの中に事細かに、どのようなことが虐待と呼ばれるかと記載されています。“誰が虐待するのか”“どうして起こるのか”なども、質問形式に答えるという形で簡潔に記載されています。
たとえば、「なぜ、シニアは虐待されていることを話そうとしないのか」ということに関して“自分の家族から虐待を受けていることを話すのは恥ずべきこと”と考えていたり、他人に話すことにより“その家や、コミュニティーから追い出されるようなことになるのでは”と恐れているから、また手助けをしてくれる人や、機関があることに気がついていない場合が多々あると書かれています。そして、項目順に肉体的虐待の定義、心理的虐待の定義等を詳しく説明しています。

その中で一例として、肉体的虐待の定義には下記のように記載されています。

●攻撃する たたく 押す 揺さぶる 突く 激怒する 不適当な肉体的制限
●薬を多く、もしくは少なく与えて害を与える

  • お年寄りとの良好な関係イメージ

心理的虐待の定義の項では、個人の自尊心や威厳が傷つけられた行動を指し、その中ではっとさせられたのが、「子ども扱いする」「日常の活動から隔離する」というのがあります。これは、我々子ども側が老いた両親を気遣いすぎてということもあるのではないでしょうか。何ごとも私たちがするより、ゆっくりと行動されるお年寄りを見ていて、ついつい自分がやったほうが早いので先回りをしてやってしまったりすることが、多々あるように気がします。これは程度の問題もありますが、実際は“知らず知らずのうちに相手を傷つけていることがあるのだな”と考えさせられました。また、カナダのお年寄りは、老いても独立を重んじる精神を重視していることの表れなのかもしれません。

そして、パンフレットの最後にはこう記載されています。

●お年寄りは尊敬されるに値する。
●お年寄りは安全に安心して生活するすべての権利がある。
●虐待にはいかなる理由もない。

幼児虐待のように家庭内で虐待が行われた場合、なかなか表面には出にくい問題だと思われますが、テレビやインターネット、パンフレットなどでお年寄りを含むすべての人を啓蒙していくことが大事だなと改めて考えさせられました。