介護マガジン

ホームヘルパー長谷川華子の「ハツラツデイワーク 奮励記」

2008/06/03 人形

77歳になる女性のご利用者様には認知症状があります。身体機能は問題ないのですが、認知症状による理解力の低下から、排泄、入浴、食事、更衣など、ほとんどの動作に介助が必要な状態です。もともと穏やかな性格のご利用者様なので、大声を出したり暴力があったりすることはないのですが、時折急に表情が険しくなり怒った様な口調になったりする事があります。

先日の夕食後、トイレ誘導が終わりテレビ前のソファにて過ごしていただいていました。声を掛けるとニコニコとした笑顔を返して下さいました。しかし、暫くして再度声を掛けると先ほどまでの笑顔は無く、表情険しく「性の悪い事ばかり言って…」と言われました。ご利用者様の中で何か思い出されたのか、気分を害する事があったようでした。誰しもイライラしたままの気持ちではしんどくなってしまいます。ご利用者様の話に耳を傾ければいいのかもしれませんが、興奮状態が続くと血圧も上がってしまいます。そこで今、ご利用者様が口に出されている嫌な感情を、別の良い感情にすりかえるため、職員が持ってきていた赤ちゃんの人形を差し出してみました。「かわいいでしょう」とその人形をご利用者様に差し出すと、険しかった表情は一変、とびきりの笑顔になりました。私から見ればただの人形ですが、ご利用者様には本当の赤ん坊に見えるようで、話しかけたり子守唄を歌ったりとあやし始めました。その日は結局休まれるまでその人形を離す事なく、とても穏やかな良い表情で過ごされていました。