介護マガジン
はじめての介護
家族が突然倒れた時に慌てないために
日頃、私が行っている介護相談では「突然介護がはじまった。どうしたらよいのでしょうか」というご相談が多くみられます。ところが、突然家族が自宅で倒れた時に「頭が真っ白になってしまった。もっと素早く救急車を呼べば、母のその後の状態はもっと軽くすんでいたかもしれない」、「遠慮して救急車をよばなかった。結局手遅れでした」、「とっさのことで、自分でなんとかできる、しようと思ってしまった」などというため息のように切ない言葉を吐かれる方もいらっしゃいます。それはすでに相談ではなく、後悔の念に近いなんとも言えない言葉となり、私の心にも切なさが残ります。
高齢者のいる家庭では、加齢によるからだの変化により急な病気や事故などの発生リスクが高く、また多くの方が服薬していますので、薬による作用や副作用で具合が悪くなることもあります。誤嚥による窒息死や入浴中の溺死など家庭内の事故により平成18年には12,152人が亡くなっています。年代別にみますと高齢者が圧倒的に多く、交通事故による死亡者数全体9,048人を上回る数の高齢者が我が家で事故死しています。(出典:厚生労働省 人口動態調査統計 平成18年)
家族が突然自宅で倒れたらどう行動しますか?私たちにできることは何でしょうか?
高齢者の緊急事態では適切な対応がその後を左右します。家庭でできる対応を日頃から確認し話し合っておくことが大切です。看護、介護の現場でも緊急事態は最も緊張が走る瞬間ですから、誰にとっても穏やかな場面ではありません。一般家庭でパニックになるのも当然でしょう。だからこそ落ち着いて冷静に必要なことが行えるよう、シンプルな対応を日頃から考えておきましょう。話し合ったことをノートに書き出してメモしておくだけでも、実際の行動の手順が整理されます。
高齢者の家庭内での事故死データ

まずは緊急時の対応です。
高齢者の家庭内事故死で毎年上位にランクされるのは、窒息死・入浴中の溺死・室内や浴室などでの転倒事故です。また、死亡や要介護原因の上位は例年癌、心疾患、脳血管疾患です。脳梗塞や脳内出血、心筋梗塞などは意識消失や胸痛など急な状態の変化で発症することがあります。緊急事態が発生したらまずは落ち着いて、何が起きたかを確認することが大切です。そして誰か他の人がいたら知らせましょう。一人は高齢者のそばで声掛けをします。一人は119番への通報です。かかりつけ医がいれば、救急車が到着するまでに連絡を入れます。生命の危険があるようでしたら、応急処置を行います。呼吸をしていなければあごを引き上げ、呼吸をしやすい体位にします。それでも呼吸の気配が感じられなければ人工呼吸を開始します。さらに頸動脈に指をあてて脈が触れないようであれば心臓マッサージの開始。
その後は心肺蘇生の人工呼吸を繰り返します。全国の消防署では「救命講習」を行っていますので一度受講して基本的な救急処置方法を身につけておくと、いざという時に慌てずにすみます。 (詳細は拙書「介護生活これで安心」(発行:小学館をご参照ください))
東京救急協会の連絡先:電話03-5276-0995 ※その他各地域の消防本部へ
救急車を呼ぶ時の注意点
最近は携帯電話が普及していますが、携帯電話を使って119番すると地元の消防指令センターではなく、隣接する自治体の消防指令センターにつながってしまう場合が時々あります。自宅の固定電話から119番しましょう。
また、遠隔地に住む親に代わって市外局番+119番にかけると、使用している電話の所在地の消防指令センターにつながってしまいます。遠隔地から通報する際には出動先の住所を伝えましょう。
画像をクリックするとPDFファイルが表示されます。

Photo http://japan-geographic.tv/
『高源院に咲く紫陽花』 撮影地:飯山
雨 八木重吉
窓をあけて雨をみていると
なんにも要(い)らないから
こうしておだやかなきもちでいたいとおもう
この原稿を書いている窓の外は雨が降り続けています。原稿が掲載される頃は梅雨も明けて夏の青空がのぞいているでしょうか。雨の日は静かで嫌いではありません。植物も喜んでいるように感じます。雨に打たれる紫陽花の姿はいつ見ても本当に美しいと思います。好きな風景、好きな言葉、昔から変わらないもののひとつです。
次回は、家庭でできる応急処置について、詳しくお伝えします。

