介護マガジン

はじめての介護

介護を始める前に必要なこと

「家族が急に入院し、緊急対応は何とかできて治療も進んだのですが、からだの障害が残りました。その後医師よりそろそろ退院をと勧められました。しかし、はじめての介護です。何をどう準備したらよいでしょうか」こんなご相談をよく伺います。
誰にとっても、いつこんな日が訪れるかわかりません。“ぴんぴんころり”が理想とはいえ“老いへの準備”は暮らしを考える上で当然必要なことです。ところが自分や家族の老いを見つめ準備するのはなかなか辛い作業。そうでなくても人は見たくないものは、なるべく見ないように生きてしまいがちです。そのため、いざ必要となってから“どうしよう”と慌てる方もまだまだ多いのが現状です。
また在宅介護の場合、介護される側、する側の双方にとって快適な生活を実現していかなければなりません。家族の中で充分な話し合いが必要です。
そこで、今回は「介護を始める前に必要なこと」をお伝えします。この全体像がはじめに頭に描けると、介護の準備はずいぶん楽に、スムーズになります。ノートにまず全体像を描き、ひとつひとつ確認しながら整理してみてはいかがでしょうか。もちろん、すべてを初めから書き込めなくても大丈夫です。考えることが大切だと意識してみてください。

現状の把握

まずは現在の状況を正確によく把握することが大切です。からだや治療の経過を客観的に理解していないと今後必要な対応について正確にプランをたてる事ができません。医師や看護師、理学療法士などに治療経過、今後の方針やリハビリのゴールなどを、よく確認しましょう。

介護保険制度の理解

急性期の病院は医療保険の対象です。状態が安定し始めた時期に介護保険の認定を受け、介護保険制度の利用ができるよう準備が必要となります。
介護保険の申請は、利用者の住民票が届けられている住所で行うのが原則です。
お住まいの市区町村の介護保険課の窓口か地域包括支援センターへ行って申請を行いましょう。そこまで行えばあとは流れがスムーズです。その後は訪問調査を受け、要介護度の認定結果を待ちます。申請から結果が出るまでの期間は原則30日以内です。
要支援1・2の場合は地域包括支援センターに、要介護1〜5の場合はケアマネジャーを選んでケアプランを作成、そして介護サービス開始となります。
2000年に制定された介護保険制度により、高齢者と家族の生活はずいぶん変わりました。介護を家族だけではなく社会で支えよう、という趣旨に基づかれて創設されています。それまでは利用者側は自由にサービスを選ぶことはできませんでした。与えられるのではなく、選んでサービスを受ける。これが介護保険制度の活用です。

生活の場所の確保

入院した急性期の医療保険対応の病院には長く入院することができません。状態が安定し急性期を脱したら、転院先の生活の場の選択が必要になります。
医療が必要な場合は、介護保険を利用できる介護保険適応の療養型医療施設(病院)へ。
介護が必要な場合は、在宅か介護保険施設を選択します。
リハビリが必要な状態では、リハビリ病院か老人保健施設を選択します。
介護保険施設である特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は現在約39万人もの待機者がいて、どの地域でもすぐに入居することは難しい現状があります。
また病院からの受け入れ先である療養型病床は(比較的病状が落ち着いているものの長期にわたり療養を必要とする患者のための病床)約35万床を約22万床に削減する方針が公表されています。寝たきりだから、点滴や経管栄養、胃にチューブを入れているから、といっても病院の受け入れ先を探すのはなかなか困難です。
このように、自分の状態にあった生活の場を選択することはなかなか難しく、日々のコンサルティングでもお困りの方々から切実な声をうかがっています。
相談機関を活用し、日頃から地域の介護施設や高齢者施設の情報を得ておくことが大切でしょう。

住環境の整備

長く住み続けた我が家でいつまでも暮らしたい、これが多くの方の希望でしょう。とは言うものの、長年住み続けているからこそ“住まいを体に合わせる”という発想は持ちにくいもの。住宅に手を加えることに抵抗を示す方も多くいらっしゃいます。もし車椅子になったら、杖歩行が必要になったら、玄関の段差やドアの開閉、トイレ、浴室、廊下の幅・・・いかがでしょうか?住み続けることが可能でしょうか。
入院中、または一時的に老人保健施設などに移っている間に必要な住宅リフォームを検討し、在宅介護の準備を進めましょう。バリアフリーのリフォームを検討する時には、住宅改修だけではなく、人的サービス(在宅サービスや家族のマンパワー活用など)、福祉用具の導入、この3つから総合的に検討することが必要です。荷物を捨ててシンプルにすることや家具のレイアウト変更だけでも大切な環境整備であることもお忘れなく。
また在宅介護用品というと慌てて介護用品を買い求めてしまう方が多いようですが、体の状態あったもの、本当に必要なものであることが大切です。最初にご本人の意欲と状態をしっかり把握することも肝心です。
介護保険や市区町村の助成制度も上手に活用しましょう。

ケアプラン作成のための情報整理

在宅サービスを利用するためにどんなサービスがあるかを知ることはもちろんですが、その前にどんなことで困っているか、不安があるか、どんなサービスを利用したいかという意思を本人、家族間で確認しあっておくことが大切です。その準備ができていればケアマネジャーとの話し合いがスムーズに進みます。

地域情報・相談者の活用

お住まいの地域のボランティアやNPOなど、高齢者のための活動をしている団体はありませんか?最近では住民による寝たきりを予防する会、移送をサポートする会、配食サービスの会なども盛んに行われています。今まで気にとめていなかった方も少しご近所情報に耳を傾けてみましょう。

判断能力の低下した高齢者の生活を守るサービスの活用

判断能力や交渉力が衰えがちな高齢期でも、自分の財産は自分で守り、必要なサービスは自分で判断選択し契約をしなければなりません。残念ですが、近年は高齢者を狙った悪徳商法などの消費者被害が急増しています。
全国の社会福祉協議会が行う『日常生活支援事業』(東京都=地域福祉権利擁護事業)では判断能力が十分でない方を対象に、1.福祉サービスの利用援助、2.日常金銭管理サービス、3.書類等預かりサービスに関する相談や連絡調整、代行等を行っています。
また、認知症の高齢者を保護するためにかつては禁治産制度および準禁治産制度というものがありました。それをもとに2000年『成年後見制度』が新しく誕生しました。本人の判断力が不十分である人が利用する『法定後見制度』、判断力が衰える前に自分のことは自分できめる権利を尊重する『任意後見人制度』があります。
核家族化、独居老人が増加する日本では、成年後見制度は今後活用される機会が増えます。
様々なトラブルを回避するためにも、制度に関する知識や情報を持ち必要に応じ活用されることをお勧めいたします。

外出環境の整備

からだの機能が低下し始めた時期こそ外に出かけることがより必要になってきます。
外出はふさぎがちな気分を明るくし、季節を感じ人に出会いさまざまな刺激を受けます。
ところがからだの機能が低下すると、今までのように一人で外出できなくなってしまったり、不安が伴い外出を知らず知らず控えてしまいがちです。毎月の通院も、誰がどのような方法でサポートしますか?そこで、こんな時こそ様々な移動をサポートするサービスを活用し、安全なおでかけ環境を作る必要性があります。
例えば移動手段である頼りになる車(福祉車両)。安全に負担なく移動ができ、乗り降りに伴う危険も軽減します。車椅子でも移動できる車を購入すれば好きな時に家族で旅にでかけることも。またからだの機能を補う歩行補助用品や靴の活用、緊急時の呼び出しブザーの携帯、訪問介護による外出の付き添い、といった人的サポートの活用など。移動をよりスムーズにするためにはバリアフリーや利用可能なトイレの場所などのマップ作りも必要になるでしょう。住環境と同様に外出環境を整えることも、とても大切なことです。


図 介護を始める前に
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介護を始める前に

いつの間にか晩秋、早いですね。少し寒くなりました。今日は紫色のワンピースにネパールの機織り機で織られたあたたかいストールをぐるぐる巻いて過ごしています。この季節は外を歩くたびに色とりどりの葉を拾い集め、手帳にはさんで押し葉にするのが私の楽しみです。小さな美しい木の葉も1枚1枚表情が違います。虫に食われていたり、傷ついていたりしていてもそれぞれ落葉になるまでの物語があるようで、しげしげと手にとって眺めてしまいます。お散歩コース、日比谷公園の松本楼の隣に立つイチョウの巨木からは、イチョウの葉が裏を表を見せながら大地に舞い落ちて、黄色い天然絨毯を作っています。
「東洋の英知」とゲーテに称されたことのあるイチョウの歴史は古く、地球上に現れたのは2億数千万年も前で、恐竜が銀杏を食べていたそうです。鎌倉時代、あるお坊様が中国から仏教と一緒に日本に持ち帰り日本全国に広がりました。イチョウ葉エキスはアルツハイマーの治療薬として臨床試験が繰り返され、その効果が期待されています。
太古の昔から人の暮らしの身近にあり、力強い生命力を持っています。「お〜い、ずいぶんと長生きしているんだね〜」
季節を人の年齢に例えると、やっぱり始まりが春で晩年が秋から冬でしょうか。四季は繰り返し巡るけれど一生は1本勝負。実りの美しい人生の後半にはどんな景色がみえるのか、そうなってみなければわからないからこそ、いつも私は問いかけています。「今映っているのはどんな景色ですか?」。介護のある暮らしで得られる哀しみや喜びも、色づいた木の葉も、神様からの贈り物だと感じるのは私だけでしょうか。

秋の贈り物 Photo http://japan-geographic.tv/
「秋の贈り物」
撮影地: 奥日光 中禅寺金谷ホテル

※11月29日(土)東京ミッドタウンにて開催されるセミナーで講師を勤めさせていただきます。
私のテーマは「シニアの様々な住まい方」。リフォームプランナーの西田恭子さんと睡眠改善インストラクターの茂木直治さんとの3部構成です。詳しくはイベント情報をご参照ください。