介護マガジン
ほっとライン寄席
Vol.81 ● 夏のみかんの値は
いや〜、暑いですねぇ〜。今年は本当に猛暑です。こう暑いと表へ出る気になりません。といっても一日中、クーラーの効いた部屋にいるというのも体に悪そうです。
お客様というものは、ありがたいです。この暑いなか大勢の方が寄席へお運びくださっています。心より御礼申し上げます。
もっともクーラーがよくきいていますので席へ着いた途たん、ぐっすりとお休みになっている方もいらっしゃいますが…。寝るのはかまいませんが、いびきと寝返りをうつのはやめてください。
この間なんか、寄席が終わったのにまだ寝ている方がいるので起こしにいくと、その方亡くなっていました。落語を聞きながら息を引き取るのが幸せかどうかわかりませんが。 この夏、暑くて表へ出るのが嫌だという方、ぜひ寄席へお運びください!空いてて冷房がよく効いていますので、ゆっくり寝られます。我々噺家も起こさないように静かにしゃべりますから。
考えてみますと、昔は冷房なんざありませんから、色々と涼しくなるよう工夫したものです。
蜀山人という方に、涼しいというのはどういうのが涼しいのでしょうかと伺いますと「庭に水、新しい畳に伊予簾(いよすだれ)、すきや縮(ちぢみ)に色白の美女(たぼ)」と答えたそうです。なるほど、これは涼しい感じがします。逆に暑いのはと問うと「西陽(にしび)さす、九尺二間(くしゃくにげん)の太っちょの背(せな)で子が泣く、飯(まま)がこげつく」ってこりゃ暑そうですね。
緑のたくさんある庭に打ち水をして、縁側で一杯やっていると、風鈴がチリチリーンと鳴るなんてぇのはたまりません。地球温暖化の昨今では無理でしょうが…。 落語の夏の噺に「千両みかん」というのがあります。季節感がなくなったので少しわかりにくい噺ですが、とてもいい噺です。
ある大店の若旦那が病気になったが、病名がわからない。お医者さんがいうには、なにか胸のうちに思い込んでいることがあるから、それをかなえてやれば治るだろう。番頭が聞きだすと「みかんが食べたい」という。ところが季節は夏。冬のくだもの“みかん”があるわきゃない。方々さがしたが、みつからない。神田須田町の果物問屋に、たったひとつだけ腐っていないみかんがあった。値を聞くと、なんとみかんひとつ千両だという。番頭が、さて困ったと旦那に話をすると千両で大事な倅の命が助かるなら、こんな安いことはないとあっけなく千両出して、このみかんを買う。
番頭がみかんを千両で買い、もって帰り若旦那に渡して皮をむいてみると十袋ある。一袋が百両だと番頭が思い見てみると、若旦那あっという間に七袋食べ、残った三袋を番頭に差し出し両親と三人でわけて食べろという。三袋のみかんを手にした番頭。
「私が、のれん分けで店を出す時に、もらえるお金がせいぜい五十両。このみかん三袋で三百両。こんな大金は生涯手にすることはできない・・・。旦那、すみません」
番頭、この三袋のみかんを持って行方不明。
今年のような猛暑で、この番頭、頭がもうろうとしたのでしょう。
そういえばスーパーでみかんひとパック500円で売っていました。5個入りだから、ひとつ100円。
大変な違いです。
