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筆者プロフィール

 

横溝夏葉子
横溝 夏葉子
(よこみぞ かよこ)

静岡県生まれ。中央大学商学部出身。
某化粧品会社にて、商品開発部、マーケティング部に所属。 1998年アメリカへ渡る。 現在、ニューヨーク州ウエストチェスターにある、 ニューローシェル大学大学院ジェロントロジー(老年学) そして、サナトロジー(死亡学)専攻。 精神的、肉体的加齢、ケースマネージメント、リタイヤメント プランそしてホスピス等と幅広い分野を学ぶ。

Vol.28   高齢者と食の関わり

「食」は「楽しみ」

年老いても、身体が不自由になってもできる生活の楽しみは「食」だと常に考えています。確かに病気などで食事制限はありますが、本人が求めるものを楽しめる環境が、高齢者に望まれる「食」環境のあり方ではないでしょうか。

年齢が上がるにつれ、味覚・嗅覚が減退したり、嗜好も変わったり、消化器官などの機能低下などにより空腹感も減ってきます。そのため食欲がわかず、食事を楽しむことが以前ほどではなくなってくるかもしれません。しかし、スポーツ、旅行、読書などに比べると、楽しめる期間は長いでしょう。健康維持のための食事制限メニューだけではなく、思いっきり自分を甘やかすような「食」もたまには気分転換や楽しみとして考えてみてはいかがでしょうか。

高齢者の「食」環境

身体的や社会環境などのさまざまな要因から、アメリカでは65歳以上の1/3は栄養不足とという調査報告もあります。食欲減退によって食事を摂らなかったり、自分で食事の支度が困難であったり、また1回当たりの食事の量も十分ではない場合も多く見られます。施設に入るといままでよりも健康状態が良くなる高齢者が多いのも、それまで栄養バランスのとれた食事を3食摂っていなかったのだと容易に想像できます。

実際、高齢者の方々ご自身の「食」に対する意識はどうなのでしょうか?たとえば、今年満100歳を迎えた女性は、「同じものばかりでは飽きてしまう。何か変わったものが食べたい」と言っていたので、麻腐豆腐を作ったところ大変喜ばれました。ちなみに、なかなか高齢者との異文化交流は相手の興味をひきつけるのが難しいのですが、「食」を通してだと円滑に進むことが多いと実感します。

また、ナーシングホームの喫茶室でよく耳にしたのが、糖尿病でもおいしいクッキーが食べたいということでした。施設では一切糖尿病の住民たちには甘いものを与えません。身体が不自由になっても楽しめる「食」のはずなのに、責任問題もありますが、そこまで徹底するのも残念です。自由になる時があってもいいのではと思うのです。

生活の中で重要な位置を占める「食」

先日、そのナーシングホームのスタッフとそこに住む高齢者たちの集会に参加してきました。半年に1回この集会は開かれ、参加者はナーシングホームへの意見を各部署の代表に申し立てします。例えばレクリエーション担当であるとか、図書館長であるとか、直接担当者に意見陳情ができます。

参加者はおおよそ各担当者に2〜3の質問をした程度で、それほど活発な印象を受けなかったのですが、最後に食事の担当が壇上に上りました。その途端、次々に参加者が手をあげ意見・不満を述べます。やはり「食」に対しては要望が多く、生活に対して彼らが求めている重要な要素であることの表れでしょう。食事担当は続々と挙がる質問をさえぎり、集会を切り上げてしまったほどです。その意見のほとんどはメニューのバラエティーであったり、すべての人が基本的には同じメニューであるものを選択できるような幅を持たせてほしいということでした。

また、アメリカ全土に最も浸透している高齢者援助サービスであるミールズ・アンド・ウィールズの80%は政府援助から出ており、その他は自治体とボランティアや寄付で運営されています。政府側は、作りたての料理を温かい状態で運ぶことを規定しています。メニューは高齢者用という感じはせず、大きな肉の塊であったり、グレービーソース(肉汁でつくったソース)のたっぷりかかった、こってりとしたものも多いです。子供たちでも喜びそうなメニューです。「食」はそれまでの好み、環境、文化が作用するので、「高齢者はあっさり味で肉なんかは食べない」なんていう偏見は持たないほうがよいでしょう。

「食」はレクリエーション

別のナーシングホームでは、レクリエーションチームは毎週各階ごとにカップケーキやバナナマフィンなどを作り、焼きたてを皆で分けて楽しみます。非常に人気のあるレクリエーションで、痴呆が進んだ人も、身体に不自由のある人も参加できます。夕食に差し支えるという意見もありますが、おいしいものを食べる満足感には代えがたいと思ってます。

高齢者の方は、食のバラエティーが減ってきてしまいます。特に1人住まいの高齢者などは自分だけで調理をすると他人の意見がないこともあり、作るものもワンパターンになりがちです。たとえば、いくら料理のレパートリーの広い主婦でも、子供に意見を聞いたり、スーパーに行って材料を見て、今日食べるものを決めることが多いのではないでしょうか。どの年齢層でも「何を食べたい?」と聞かれても、何かきっかけがないとなかなか思いつかないものではないでしょうか。

また、施設などに入っていたり、身体に不自由があって買い物に出かける機会の少ない高齢者は、自分が何を食べたいかも思い浮かばなくなるでしょう。

そんな時は料理ブックを見たり、スーパーや買い物に行ったりすることもヒントになるでしょう。ナーシングホームでも、食事やメニュー、食べたいものなどに対して話し合ったり、たまにはレストランのようにメニューから選択できるといいと考えます。

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